小学校受験で問われるのは、ご両親の育児姿勢。「合格につながる力」を育てる家庭教育について、伸芽会教師が思いを綴ります。
失敗を恐い顔で怒らない。失敗の原因をともに考え、自力で解決させれば、それは成長への試練へと変わります。
運動テストで平均台を歩くときに、バランスを崩し、途中で落ちてしまう子がいます。「先生、もう一度やっていいですか」と、素直にたずねる子、黙ってやり直す子、落ちたあとの行動はさまざまです。ただ、そこで問題なのは「落ちたらどうしよう…」こう思い込んでしまっている子です。失敗したときのお母さんの恐い顔がちらつき、それがプレッシャーとなって、スムーズな行動に移せないのです。コチコチの状態では、狭い平均台から落ちてしまうのも当然です。また、わからない問題があるときに、「先生…わかんない」といって涙ぐんだり、べそをかき始めるお子さんがいます。悲しそうな目が答えを教えてと訴えています。これも気になる光景です。できないことがあるのは当然です。できないことがあるから、「どうしてなんだろう、なぜなのかな?」と、子どもは疑問の目を向け、いろいろ自分なりに考え、行動に移すのです。教育偏中型のお母さん方は、〝失敗は成功のもと〟という諺を忘れがちです。お子さんの赤ちゃん時代を思い出してみてください。どんなに手のかからなかったお子さんでも、失敗の連続ではありませんでしたか。できないからといって腹を立てましたか。怒って教えましたか。この子はできないのだからと、温かく見守り励ましましため。ですからお子さんはご両親の期待どおりにスクスク育ってきたのです。ところが、小学校受験となると、失敗することを極端に嫌がるお母さんが増えてきます。何事もできなくてはいけないと意識過剰になり、子どもの発達段階も考えずに、いろいろと教え込みにかかります。「夏の仲間は、風鈴、かき氷、蚊取り線香でしょう」それらは大人には夏の風物詩であっても、現代っ子には縁の薄いものばかりです。見たり、手で触ったりしたことがなければ覚えられません。興味がなければ忘れるのは当然です。お母さんが失敗を嫌がるようになると、「命令・抑圧・禁止」といった子どもにとって典型的なつまらない環境をつくりがちになります。失敗すると怒るようになるのです。お子さんも怒られるのは嫌ですから、お母さんの指示どおりのことしかやらなくなります。お母さん方にとっては素直でいい子なのでしょうが、実際はお母さんの指示がないと何もできない「指示待ち幼児」になっているに過ぎないのです。「指示待ち幼児」は失敗の経験が極端に少ないので、やったことのない新しいことには積極的にチャレンジしません。それはお母さんのお手本がないからです。そして失敗したときには、お母さんの恐い顔が浮かんでくるのです。失敗したらどうしようという不安がプレッシャーになり、うまくいかないのです。失敗を恐れる子にしてはいけません。小さな失敗は、次の段階へ成長するための試練なのです。失敗の原因を考えてあげ、それが試行錯誤の繰り返しであれば、温かく見守り自力で解決させるように仕向けていくべきです。