小学校受験で問われるのは、ご両親の育児姿勢。「合格につながる力」を育てる家庭教育について、伸芽会教師が思いを綴ります。
小学校受験の絵画で問われるのは、「上手・下手」のテクニックではありません。五感を使い、楽しく描ける環境作りが大切です。
小学校受験でよく出題される絵画の課題。この夏、ぜひご家族で取り組んでいきたい絵画の楽しみ方についてお伝えしたいと思います。その前に、幼児期の絵画における〝上手〟〝下手〟とは、どのような基準だと思いますか?お母様のなかには、「うちの子は絵画が得意ではなくて…」とお悩みになったり、「余白が残らないように、全部に色を塗ってあげるのよ」など、指示を与えたりする方もいらっしゃいます。しかし、入試会場で重視されるのは、大人の考える〝上手〟〝下手〟というテクニックではありません。子どもにとって絵を描くという行為は、ときとして言葉以上に自分を表現する大切な手段でもあります。学校の先生方は、絵を通して子どもの心理状態や、これまでにどのような体験を積み重ねてきたのかを読みとっている場合が多いです。では、入試でよく絵画を出題している学校を挙げてみましょう。慶應義塾幼稚舎では、「音の出るものを描いてみましょう」といったひねりのあるものや〝粉絵の具〟の使い方を説明してから絵を描かせるなど、発想力や理解力を問う課題が出されることが多いようです。早稲田実業学校初等部では、課題の最中に「何を描いているの?」といった会話を通して、コミュニケーション力も見ています。成蹊小学校では、描いた絵をペットボトルに貼り、ボウリングのピンに見立てて遊ぶなど、制作の一環として絵画を取り入れています。東京女学館小学校などの女子校では、読み聞かせたお話に合う絵を描かせる条件画などが出題されています。できあがった絵だけでなく、話をきちんと理解しているか、課題の条件を守れているか、指示に沿って自分で判断できているかといった力も見ているのです。もちろん伸芽会でも、絵画の課題も多く取り入れています。まずはのびやかに、楽しく描ける環境を作ることが大事ですから、指導で「こうしなさい」と指示することはありません。しかし、よりイメージを膨らませられるように、イヌの絵を描いているお子さんに、「イヌの耳っていろいろな形があるよね」「どんな尻尾をしているのかな?」など、ヒントになるような言葉がけをたくさんしています。では、ご家庭ではどんなことをするとよいのでしょう。私たち教師はよく、「日常生活のなかで〝観察する力〟をはぐくんでください」とアドバイスしています。例えばカボチャを見て、「硬い皮は濃い緑色だけど、実は橙色だね」「スイカに比べると、つるが太いのかな?」など、カボチャをいろいろ角度から捉えた言葉をたくさんかけてあげるのです。できれば、「カボチャってあまり匂わないんだね」「触るとごつごつしているね」など、五感を使った理解を促すといいでしょう。それが絵の表現力を伸ばすことにつながります。夏休みは、ご家族で外出される機会も多いので、スケッチブックとクレヨンだけでなく、まわりに自然物などを使って描くようにしてください。海辺の砂浜に大きく描いたり、川原で拾った石に描いたりするのもいいでしょう。伸芽会のサマー合宿では、みんなで拾った花や葉、木の枝などをコラージュして絵を描いています。落ち葉や花などでコラージュしたり、木の幹などでフロッタージュ(こすり出し)したりして、「この形は○○に見えるね」などと想像を膨らませてもよいでしょう。ご家族みんなで楽しみながら描く経験を増やし、完成した作品はリビングや玄関などに飾るコーナーを作ると、お子様の創作意欲をより引き出すことができますよ。