早稲田大学の現代幼児教育研究会のメンバーでもある伸芽会教師が、子どもの教育環境を根本から考えます。
伸芽会メソッドは、幼児を将来の社会の担い手に育てるという大きな夢に支えられています。その実践のひとつとして「伸芽’Sクラブ」は生まれました。
1 私たち伸芽会が、早稲田大学が中心になって組織された現代幼児教育研究会に参加させていただいているのは、すでに半世紀以上にわたって幼児教育の実践現場に立って学齢前の子どもたちと向き合ってきていることによっています。子どもたちを取り巻く環境は、この50年で驚くほどに変化し続けてきました。家族構成が小ユニットになり、地域のコミュニティーが薄れ、かつてのように戸外でみんなで遊ぶ機会が激減しました。それに加えて、頭脳だけを刺激するデジタルゲームが子どもの心をとらえています。ここしばらく社会問題となっている「小プロブレム」は、このような幼児期から学童期に急に移行させられた子どもに起こる現象だと思われます。教室でじっと先生の話を聞けない。立ち上がったり、机に乗ったりする。子ども同士で騒いだりつかみあったりする―これでは学級運営ができません。これは、幼少期に適切な対応をせずに小学校に入ってしまった結果なのではないかと私たちは感じています。伸芽会の教育は、幼児が小学校の環境になじむ準備過程のようなことでもあるので、できれば私たちがしていることを公教育の場にご紹介して、「いきなり教科の学習に入るのではなくて、前段階としてこういうことをやってはどうですか」と、提案できたらいいと考えています。学校で私たちのメソッドを取り入れることがまだ難しいのであれば、たとえばそれぞれの幼稚園で、伸芽会がやっている教育法を少しずつ実験的に行ってもらうことでもよいのです。私たちのノウハウは受験に対応している部分もありますが、それを支えているメソッドは、幼児を将来の社会の担い手に育てるという、大きな夢に支えられています。それを公的な教育活動として実現するためには、私たちの培ってきた方法をオープンにしていかなくてはなりません。
2 いま私たちにできることから始めようと、学齢前と学齢期の保育を担う「伸芽’Sクラブ」という場所をつくりました。スタートして2年になりますが、そこでは受験のためだけではない、子どもたちがしっかりと育つためのメソッドを注入し実践しています。その保育の中で、受験を考える方には隣接した伸芽会に通っていただくことができますし、送り迎えは「伸芽’Sクラブ」でお世話します。受験は子どもにとって特別な初めての体験ですから、似たような環境を作って多少の訓練をしてあげるわけです。学校の方も、ただ試験をうまくこなす子を求めてはいません。子どもとして、人間として、将来の伸びしろを感じるような面白いお子さんを求めています。子どものあるべき姿を求めて伸芽会が推進していることが、結局は学校が求めている子ども像とも一致しているのです。「伸芽’Sクラブ」はこの2年で6校目の開校を迎えています。今後もさらに多くの方々に知っていただき、利用していただきながら、私たちも着実に夢に近づいていきたいと思っています。