人生を切り開く原動力を育てるために 第9回 考える力を高める(2)「観察力」
子どもは基本的に自分の興味のあることしか見ないもの。
ちょっとしたきっかけが、「見る力」=観察力を広げます。
小学校の入試問題ではほとんどの場合、絵で出題されます。
しかし絵を見ても、子どもは興味のあるところしか見ません。
興味がもてないのは、自分とは関係がないと思っているからです。
たとえば1枚の絵を見せられて、
「どんなものがあるか、よく見ていてね」と言われても、どこを見ればよいのかわからず、ただ、眺めているだけだったりします。
そんなときは、ちょっとしたきっかけを与えます。
たとえば幼稚園の庭の絵であれば、「ここはみんなの幼稚園と同じかな?」「だれがどんなことをしているのかな?」と問いかけます。
すると、「ぼくの幼稚園の滑り台はゾウの形だけど、この絵の滑り台はふつうだからあまりおもしろくないな」などと、絵が自分の生活と結びついて、主体的に、より深く見ることができるようになるのです。
こうした体験を重ねると、絵からさまざまな状況を理解し、ストーリーを組み立てられるようになってきます。
さらに高度な観察力が要求されるのは、さまざまな絵がたて横のマス目に並んでいる中から「横がリンゴとバナナ、たてがブドウとイチゴにはさまれている果物を探しましょう」といったペーパー問題です。これは「与えられた情報を頭の中で整理して観察する力」といってよいでしょう。
この力を育てるには、解き方を教えるよりも、問題提起と環境作りをしていくことが大切です。
子ども自身に「どうなっているんだろう」と思わせるところから教育が始まるのです。
前述の問題では「はさまれている」という状況が理解できるかどうかがポイントです。
伸芽会の授業では棚と積み木を使って、消防車などのミニカーを「右に丸、左に三角のあるところに」とか、「上に四角、下に長四角のある場所に」と実際に置く体験をすることで、はさまれた状況を理解させています。すると、はさむ方向にも横、たて、斜めがあることに気がつくようになります。
また、子どもの特徴として全体ではなく一部分しか見ていないことがあります。
たとえば花を見ても葉は見ていない。
そんなときは、チューリップと水仙とヒヤシンスの葉がどう違うのかを、いかに印象づけてあげるかが大事になります。
葉の形に関して「この葉っぱ、同じかな」などの問題提起をすると、子どもはど「どう違うの?」と興味をもって観察し始めます。ここから観察力が育っていきます。
「観察力」はペーパーテストだけで求められる力ではありません。
「まわりを見る」「状況を見る」という社会で問われる重要な能力につながっていきます。
周囲を見て、どこを通れば邪魔にならないかを判断したり、みんなで話し合って何かを決めるときに、黙っている子に気づき、意見を聞いてあげたりすることができる社会性や協調性の土台になる力でもあるのです。